日本人の3人に1人は痔主だといわれています。
 痔の主な症状は痛み、出血、脱出、かゆみです。便秘していきんだらイボが出た、不摂生して飲みすぎたら脱肛した、便を出す時痛く少し出血する、お産のとき悪くした痔が治らない、排便の都度、痔が出てしまい押し込んでいる、下痢をしたあと肛門が腫れひどく痛む、肛門が時々腫れ血うみが出る、肛門がかゆくて気になる、昔手術をしたがまた痔が出てきた、便が細く出しづらい、一度に出きらない、便な残っているような感じ、出っぱなしになっているイボが気になる、便が漏れるなどが代表的な患者さんの訴えです。
 あなたも心当たりある症状ありますか?

病院には行きたくない?

 「痔」というと、他人にお尻をみせる恥ずかしさや、なにをされるかわからないという診察に対する恐怖感、不安からなかなか病院行きを遅らせて市販薬、通販のくすりでごまかして病気をこじらせている人も多いと思います。痔持ちの人は潜在的には相当多いと思われます。
 また、肛門科というと「すぐ手術される?」あるいはガンと混同して「手術して人工肛門になってしまいますか?」と尋ねる人さえいます。
 当院で手術されたお友達の話を聞いて、自分も手術かと思って来院される方に「手術は必要ないです。薬で治しましょう」とお話するとほっとした顔をされます。
 それほど患者さんは「痔=手術」の観念が抜けないのです。
 痔で手術が必要な場合はそれほど多くないのです。実際に、手術される方は全体の10〜20%くらいです。痔核じかく(いぼ痔)、裂肛れっこう(きれ痔)ではまず保存的治療(くすりによる治療)を行えばほとんどの方が症状がよくなります。切らずに注射で治せるALTA療法(肛門の病気Q&A)は痔の治療の大きな進歩です。ですから、外来にはくすりをとりに来る患者さんが沢山います。
 万が一、手術する場合でも、あわててすぐ手術を受ける必要はありません。すぐに受けなければならない痔の手術は多くありません。時間のとれるときにしっかり治すつもりで臨めばいいのです。


ふだんの痔を悪化させず、痔と上手につきあうには?
さて、今持っている痔を悪化させないために、大事なことは?  

※排便異常が痔の最大の原因
 低繊維質・高脂肪食、ストレスの多い長時間の座位や睡眠不足のライフスタイルから不規則な排便となり、そのためにおこる肛門の病気が増えています。

◎便秘は痔を悪化させます…トイレの長居は禁物
 便秘になると、硬い便を出そうとしてトイレに長く座って強くいきむため、肛門付近の静脈がうっ血したり、切れたりしていぼ痔、きれ痔の原因となります。

  1. 日頃から繊維質の多い食品を食べるなど、バランスのとれた食事をして便秘を予防しましょう。食物繊維は便のかさを増やして大腸の運動を活発にし、便秘を改善します。
    食物繊維の多い食品は?
     納豆、あずき、おから、きな粉などの豆類、ヒジキ、こんぶなどの海藻類、玄米などの穀物、ごぼう、大根、れんこんなどの根菜類、さつまいも、かぼちゃ、ホウレンソウ、たけのこ、もやし、切り干し大根、きのこ、こんにゃく、りんご、バナナ、キウイフルーツなどの果物、干し柿、プルーンなどのドライフルーツに多く含まれています。
     生野菜を食べるよりも煮たり炒めたりしたほうが食物繊維は多くとれます。
     食物繊維は便が腸にとどまる時間を短くするので、大腸がんの予防にもなります。

  2. 朝起きがけに冷たい牛乳やヨーグルト、水を多めに飲みましょう。ヨーグルトにはビフィズス菌が含まれています。ビフィズス菌は大腸の中の善玉菌の1つで腸内をきれいに掃除してくれるとともに、腸の蠕動運動を促す作用もあるので便秘にはうってつけです。

  3. 朝食は必ず食べる。朝食を食べることが便意を生ずるきっかけになります。

  4. トイレはがまんしない。がまんしていると便意がなくなります。朝はきちんと早起きして、ゆっくり朝食を食べてトイレに行く時間を作る様にして下さい。朝の便意をがまんすると便秘になります。

  5. ウォーキング、腹筋運動が効く。運動はストレスを発散するだけでなく腸の働きもよくします。適度な汗をかく位の運動量が理想的です。おなかのマッサージも効果があります。おへそのまわりを「の」の字を書く様に時計回りにマッサージして下さい。便意を生じやすくなります。

  6. 市販の下剤を使っていると、効き目が悪くなって量が増えたり、強い効果のものが多いので下痢になって出たりし排便の爽快感が得られません。病院で処方してもらう軟便剤の様な弱い下剤と食事療法、生活習慣の改善などで排便できるようにするのがよいです。


◎下痢も痔を悪化させます
 下痢でトイレに頻繁に行き、強い勢いで下痢便の排泄により、クッションの部分に負担がかかり、イボ痔やきれ痔になってしまうのです。痔ろうの原因にもなります。
 下痢気味の人の注意は…

  1. 下痢しやすい食事は、
    牛乳…もともとからだの合わず、飲むとすぐお腹がごろごろする。温めて飲むか、ヨーグルトで代用する。
    アルコール、香辛料、冷たいものの摂りすぎ
    食物繊維…下痢しやすい人は食物繊維のように消化されない食品は逆効果となるので控える。
    脂っこい食物を摂りすぎない。
    食べ過ぎに気をつける。

  2. 食生活だけでなく疲労や睡眠不足を解消して体調を整えることが大切です。

◎排便時強くいきまない
 いきみは肛門に強い腹圧がかかり、肛門をしめているクッション部分の血管がうっ血して大きくなってきます。また、クッションの支持組織がゆるんで、クッション部分が肛門の外に飛び出すようになります。これがいぼ痔です。
 出勤前に早くトイレを済ませようといきんでいたら、だんだん痔が脱出するようになった方もいます。トイレは短い方がいいといっても短時間に出し切ろうと目一杯いきんでは逆効果です。ゆとりを持った生活で肛門に負担をかけないことが大切です。

※毎日入浴する
 入浴は家庭でできる痔の最善の予防・治療法です。肛門を清潔に保つことは痔の予防に大切です。血行がよくなってうっ血が解消されます。

※排便後、出来たら肛門を洗う
 紙で拭き取っても実際きれいになりません。温水洗浄機能付き便座がなければお風呂のシャワーで洗えばきれいになります。

※疲労、ストレスで痔は悪化する
 十分な睡眠とバランスのよい食事、ゆとりある生活を心がけ、疲労やストレスを翌日に残さないようにしましょう。

※冷えは痔の大敵
 冷え症の女性は血行が悪く、冷気にさらされると、さらにうっ血が進み、痔を招きやすくなります。寒い冬場だけでなく、夏場、冷房のきいた場所にいるときも、十分な冷え対策が必要です。

※同じ姿勢、運転はお尻をうっ血させて痔を悪化させる
 同じ姿勢を続けると肛門もうっ血するので、痔の原因になります。
 座りっぱなしの仕事、運転を仕事にする運転手、立ち仕事の理容、美容の方にも痔の患者さんは多く見られます。

※酒、刺激物の摂りすぎに気をつける
 お酒の飲み過ぎは、下痢になりやすく肛門部をうっ血させイボ痔が腫れたり、イボ痔から出血がひどくなります。お尻の具合の悪い時はお酒は控えましょう。
 刺激物は胃腸を通過して直接肛門を胃激して痔が腫れたり、出血を起こします。
 唐辛子やコショウなどを多く使った激辛料理は控えめに。

※激しいスポーツが痔の原因になることがある
 瞬間的にいきんでしまう柔道、相撲、ゴルフ、野球、冷えも重なるスキー、マラソン、ジョギング、肛門を圧迫する自転車の後に痔が悪化することがあります。この場合、まず入浴して温めて肛門の血行を良くしましょう。

※生まれつきの体質で痔になりやすい人もある
 特別便秘でもなく下痢でもなく、ほかの人と同じような生活をしていても痔になる人はあります。若いのにひどい痔になっている人は、両親、祖父母に痔の人がいることもあり、痔は遺伝する病気ではありませんが、体質が似ることが原因といってもいいでしょう。肛門に負担のない生活を心がけて下さい。