自分でできる痔の予防・セルフケア


Q

痔は自分で予防したり、ケアをしたりすることができるんですか?

A

前回お話した通り、痔は生活習慣と密接に関係しています。
ですから痔の原因になったり悪化させたりするような生活習慣を改めれば痔を予防したりセルフケアをしたりすることができます。


Q

痔の大きな原因は便秘と下痢ということでしたね。

A

はい、痔にはイボ痔、切れ痔、痔ろうという3つのタイプがありますが、便秘はイボ痔と切れ痔、下痢は痔ろうと深く関係しています。

痔の種類 class=

Q

まず便秘と関係するイボ痔と切れ痔から教えてください。

A

イボ痔はその名の通り肛門にいぼのようなものができる痔で医学用語では痔核といいます。
外側にできる外痔核と内側にできる内痔核がありますが、多くの方は両方を持っていて「内外痔核」といいます。
 切れ痔は裂肛といい肛門の表面がさけて切れてしまう痔です。
便秘をしていると硬くなった便が肛門表面を傷つけたり、またいきむ時に肛門に負担をかけてしまうためイボ痔や切れ痔になりやすいのです。

痔の種類 class=

Q

便秘で悩んでいる方が気をつけることはなんでしょうか?

A
  • 1日3食食べて、朝食は必ずとるようにしましょう。1日3食欠かさずとることが基本です。朝食後、トイレに行く時間をもつようにしましょう。便意を我慢しないでください。
  • 腸内環境を整えること。腸内環境のバランスがくずれていると便秘を起こしやすくなるので、ヨーグルトや納豆などの発酵食品を適量とりましょう。
  • 水分をこまめにとる。
  • 適度な運動をする。
  • すでに便秘の人は不溶性食物繊維(大麦、玄米などの穀物、さつまいも、ごぼう、にんじん、ほうれん草、小松菜、大豆、豆腐)を多く取り過ぎない。多く取り過ぎると「便のかさ」が大きくなり過ぎて大腸で便がスムース進まなくなってしまいます。
写真

※排便の姿勢は、ロダンの「考える人」のように、上体を前かがみ35度にすると直腸から肛門に至る角度が真っすぐ、ストレートになり排便しやすくなります。
便秘を解消することが痔の一番の予防とセルフケアになります。

ロダンの「考える人」

Q

生活習慣を心がけるということですが、市販の下剤ですとか便秘薬の使用はいかがでしょうか。

A

市販の便秘薬コーラックや大黄やセンナなどの成分の漢方の下剤は、腸の蠕動運動を促す刺激の強い刺激性下剤で日常的に長期間使うと大腸の蠕動運動が弱くなってくすりの量を増やさないと便意が現れなくなり、使い方に注意が必要です。
便秘薬で便秘が悪化してしまうことがあります。これらの刺激性下剤は便秘がつらい時に一時的に使うようにしましょう。
 慢性の便秘には、非刺激性下剤という酸化マグネシウムですとか水酸化マグネシウムなどが主な成分の便を軟らかくするタイプのおだやかな便秘薬がありますのでそちらのほうをお勧めします。


Q

最近、新しい便秘薬が出てきたそうですが?

A

ルピプロストンとリナクロチドという小腸に働きかけて便を軟らかくして排便を促すくすりです。
エロキシバットはからだの中にある自然の便秘薬ともいえる胆汁酸をコントロールすることによって便秘に働きます。
ともに、酸化マグネシウムで効かない便秘にも効果が認められます。
市販薬ではないので医療機関で処方してもらう必要があります。
高齢の方で便秘で悩んでいる方は相談してください。


Q

イボ痔、切れ痔に対して便秘の改善以外にできることってなんでしょう。

A
  • お尻負担をかけないように長時間座りっぱなしにしない。
  • トイレは短く済ます。
  • アルコールや辛いものや香辛料などの刺激物を避ける。
  • お尻の血流をよくするためにお風呂に入るとか腰回りを温める、 といったことも痔の予防や症状の緩和に役立ちます。
痔の種類 class=

Q

温めることも大事なんですね。辛いもの、香辛料がよくないのはどうしてですか?

A

香辛料は胃の中ではなかなか消化されずにそのまま腸の中を通っていきますので肛門に傷があったりした場合にそこを直接刺激して痛みを助長することがあります。
また、香辛料を含んだ食事をたくさん食べた時に便通を乱したりすることもありますので、これも痔を悪くする1つの要因になります。
また、アルコールを多くとると痔から出血しやすくなります。
出血する場合はアルコールは控えてください。

写真

Q

下痢が痔の原因になる場合を教えてください。

A

下痢が大きな原因となるのは痔ろうと呼ばれる痔です。
痔ろうは一言でいうと肛門以外に出来てしまったお尻の穴、トンネルのようなものです。
下痢をしますと肛門の中に小さなくぼみがあるのですが、そのくぼみの中に水のような便が入り込んでしまって細菌感染を引き起こしやすくします。
そうしますと、お尻の中が化膿して膿がたまることがあります。
また、いつまでも膿がたまったままというわけにはいきませんからその膿をからだの外に出すために自然にお尻に穴が開いてトンネルのような膿の通り道が出来てしまうんです。
このようにして痔ろうになってしまいます。

痔の種類 class=

Q

下痢をしないために気をつけることはなんでしょうか?

A

下痢をしやすい方は、
暴飲暴食をしないですとか
特にアルコールや香辛料、脂っこい食事を控えること
出来るだけストレスをためないようにすること
お腹を冷やさないように、寝冷えにも注意しましょう。


Q

痔ろうを治すにはどうしたらいいでしょうか?

A

残念ながら一度痔ろうができてしまうと自然に治ることはありませんので、痔ろうに気が付いたら肛門科や肛門外科を受診して適切な治療を受けていただきたいと思います。


Q

薬局に行きますと、坐薬ですとか軟膏、市販の痔の薬いろいろ見かけるんですがこうした市販薬使うことはいいんですか。

A

初期のイボ痔や切れ痔であれば市販薬で症状がよくなる場合もあります。
ただし、市販薬を1週間ほど使っても症状がよくならない場合は肛門科や肛門外科を受診してください。
また、排便時に出血がある場合ですけれども、大腸がんなどのほかの病気の可能性もありますので、真っ赤な鮮血だからきっと痔だろう安易に自己判断せずに医療機関で検査を受けてきちんと鑑別していただきたいと思います。